「子どもがいないのに遺言書は必要なの?」と疑問に感じているご夫婦は多いのではないでしょうか。実は、遺言書は子どもがいない夫婦にこそ必要な場合が多いです。
この記事では、広島で子どもがいない夫婦が遺言書を作成すべき理由や遺言書がない場合のリスクについて、具体例を交えてわかりやすく解説します。
遺言書の基本

遺言書とは、遺言者の遺産を「誰に対してどのように残すか」について記載した、法律上の効力がある書類のことです。たとえば、遺産をすべて配偶者に残すという趣旨の内容にすると、遺言者の相続が発生した際には、基本的に配偶者の方がすべての遺産を受け取ります。
遺言書の3つの種類と特徴
遺言書には、法律で定められた3つの種類があります。種類ごとの作成方法、メリットやデメリットについて以下の一覧表に整理しました。
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
|---|---|---|---|
| 作成方法 |
遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印する(民法968条) |
公証役場で公証人が作成する(民法969条) | 遺言者が署名・押印した遺言書を封印し、公証人に提出する(民法970条) |
| メリット | 自分だけで作成できる。 | 公証人が関与するため法的な不備が起きにくい。 | 遺言の内容を秘密にできる |
| デメリット | 書き方の不備等で無効になるリスクがある | 証人2人が必要。公証人への手数料がかかる | 実務上ほとんど利用されていない |
なお、3種類の遺言書について詳しく知りたい方は「遺言書の3つの種類の違い」をご覧ください。とくに、リスクを抑えて安全に遺言書を作成したい方は「公正証書遺言のメリットと作成手順」も参考にしてください。
遺言書がないと相続はどうなる?

遺言書がない場合、法定相続分という法律で定められた相続の割合によって、相続人全員で財産を分けることになります。
また、相続人には以下のような順位があり、基本的には順位が高い人から順に相続人になります。たとえば、亡くなった方に子どもと両親がいた場合、順位が高い子どもが相続人となり、順位の低い両親は相続人にはなりません。
- 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:直系尊属(父母。父母が亡くなっている場合は祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)
なお、配偶者は常にほかの相続人と一緒に相続人になります。一緒に相続することになる法定相続人と、それぞれの相続の割合である法定相続分は次のとおりです。
| ケース | 法定相続人 | 配偶者の法定相続分 | その他の相続人の法定相続分 |
|---|---|---|---|
| 亡くなった方の親が存命 | 配偶者+親 | 3分の2 | 親:3分の1 |
| 親は他界、兄弟姉妹が存命 | 配偶者+兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹:4分の1 |
遺言書がない場合の相続の具体例
ここでは、遺言書がない場合を前提に、子どもがいない夫婦の相続の具体例を見ていきましょう。
【Aさん夫婦のケース】
広島市内のマンションに夫婦2人で暮らすAさん夫婦。子どもはいません。また、夫の両親はすでに他界しており、夫には兄弟が3人います。
夫が遺言書を作らないまま亡くなった場合、法定相続人は妻と夫の兄弟3人です。そして、遺産が3,000万円だとすると、法定相続分は次のとおりです。
- 妻:3,000万円 × 3/4 = 2,250万円
- 兄弟3人合計:3,000万円 × 1/4 = 750万円(1人あたり250万円)
つまり、夫の遺産のうち750万円分の財産については、夫の兄弟に渡す必要があるということになります。
遺言書によって残された配偶者の生活が守られる

遺言書がない場合の相続については、これまで見てきたとおりです。子どもがいない夫婦の場合、遺言書がないと配偶者は義理の両親や兄弟姉妹と一緒に相続することになり、基本的にはすべての財産を相続できません。
しかし、遺言書があれば、配偶者にすべての遺産を相続してもらうことが可能になります。とくに、子どもがいない夫婦の場合、一般的に配偶者は義理の兄弟姉妹と一緒に相続することになりますが、義理の兄弟姉妹には法律で決められた最低限の相続の割合である遺留分がありません。また、すべての遺産を配偶者に残す旨の遺言書があれば、配偶者はほかの相続人と遺産の分け方について話し合う遺産分割協議をする必要もなくなります。
配偶者にすべての遺産を残す旨の遺言書を作成しておくことで、遺言者に万が一のことがあってもすべての遺産を配偶者が相続できるようになるため、配偶者の生活が守られるでしょう。
広島で子どもがいない夫婦がお互いに遺言書を作るべき理由

子どもがいない夫婦の場合、遺言書を作成することで残された配偶者の生活が守られます。しかし、夫婦のうち一方だけが遺言書を作成するだけでは十分とは言えないでしょう。
残された配偶者の生活を守るためには、夫婦がお互いに遺言書を作成しておくことが大切です。なぜなら、夫婦のうちどちらが先に亡くなるかはわからないため、お互いに万が一のことがあってもいいように備えておく必要があるからです。
ここからは、子どもがいない夫婦が片方しか遺言書を用意しなかった場合のリスクについて、具体例を交えながらご説明します。
相続手続きが長期間にわたり進まない
1つ目のリスクは、相続手続きが長期間にわたって進まなくなる可能性があることです。
遺言書がない場合の相続では、残された配偶者は一緒に相続する義理の両親や兄弟姉妹と遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」をしなければなりません。義理の兄弟姉妹と普段から親交があるのなら、ある程度話し合いはスムーズに進むかもしれませんが、一般的にはほとんど親交がない場合が多いでしょう。
また、遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。つまり、1人でも反対すれば遺産分割協議が成立しないことになり、長期間にわたって相続手続きができなくなる可能性があります。
なお、一緒に相続する義理の兄弟姉妹のなかに既に亡くなっている方がいる場合、基本的には亡くなっている方の子どもである甥や姪が相続人となります。義理の兄弟姉妹ならまだしも、甥や姪の場合はそもそもほとんど会ったことがなく、連絡先を調べるところから始めなければならないケースも多いです。
子どもがいない夫婦が片方しか遺言書を用意しなかった場合、相続手続きがスムーズに進められないことで、残された配偶者の生活が危うくなる可能性もあるでしょう。
残された配偶者の精神的な負担が大きい
2つ目のリスクは、残された配偶者の精神的な負担が大きいことです。
一緒に相続するのが義理の兄弟姉妹だった場合、関係が疎遠だと配偶者を亡くした直後の悲しみの中で連絡を取るのは精神的な負担が大きいでしょう。とくに、相続の話はデリケートな内容であり、話を切り出すこと自体、心理的なハードルが高いといえます。義理の兄弟姉妹と一緒に相続することになった配偶者の方のなかには、どう連絡すればいいのか分からないと悩まれる方は多いです。
また、仮に普段から義理の兄弟姉妹と親交があったとしても、遺産分割協議でトラブルが生じた場合には、それまで良好だった親族関係が悪化してしまうこともあります。実際に、相続が原因で残された配偶者と義理の兄弟姉妹の訴訟に発展して、関係が著しく悪化してしまうケースも少なくありません。
残された配偶者にとって、ほかの相続人と一緒に相続手続きをするのは精神的な負担が大きいことは、覚えておいた方がよいでしょう。
広島で子どもがいない夫婦が遺言書を作る際のポイント

子どもがいない夫婦が遺言書を作成する際にはいくつか重要なポイントがありますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
遺言書は夫婦連名で作成しない
民法975条は「2人以上の者が同一の証書ですること」を禁止しています。つまり、1通の遺言書を夫婦2人が共同して作成してはいけないということです。たとえば、夫婦で自筆証書遺言を作成する場合、夫婦連名で署名してそれぞれが押印してしまうと、遺言書は無効になるでしょう。
夫婦でお互いに遺言書を作成する場合には、必ず1人1通ずつ作成して、作成していない方が署名や押印をしないように注意しましょう。
遺言書に予備的遺言を記載する
「配偶者が先に亡くなっていた場合、財産を誰に渡すか」をあらかじめ指定しておくことを、予備的遺言といいます。たとえば「妻に全財産を相続させる。ただし、妻が先に亡くなっていた場合は、甥に遺贈する。」といった記載です。
予備的遺言がない場合、遺言書に記載された配偶者が先に亡くなってしまうと、遺産を受け取る人がいないことになります。遺産を受け取る人がいない場合、遺言書のうち該当部分が無効になり、無効になった部分の遺産については、相続人が話し合いで分けることになります。
予備的遺言を記載する一番の目的は、遺言者の思いを実現するためです。予備的遺言を上手に活用すれば、本当に残したい人にだけ遺産を残せるようにできるため、遺言者自身の思いが実現できるといえるでしょう。
なお、具体的な遺言書の作成手順については、「子どもがいない夫婦の遺言書の作り方」で詳しく解説しています。
広島で遺言書の相談をするなら専門家への相談がおすすめ

子どもがいない夫婦がお互いに遺言書を作成するべき理由については、これまで見てきたとおりです。お互いに万が一のことがあってもいいように夫婦それぞれが遺言書を作成しておくことは、残された配偶者の生活を守るだけでなく、安心して日々の生活を送れるようにすることにもつながります。
ここまでの記事を読んで、夫婦がお互いに遺言書を作成しておく必要性を感じている方のなかには、どのように作成するのがよいかわからず、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。遺言書の作成は、専門家に相談するのがおすすめといえます。
遺言書について相談できる専門家には、大きく分けて行政書士、司法書士、弁護士がいます。専門家ごとのそれぞれの特徴を整理して一覧表にまとめてみましたので、参考にしてください。
| 行政書士 | 司法書士 | 弁護士 | |
|---|---|---|---|
| 対応できる業務 | 遺言書の起案・作成サポート、公証役場との調整、相続手続き全般の支援 | 遺言書の作成サポートに加え、不動産の相続登記 | 遺言書の作成サポートに加え、相続人間の紛争対応、調停・訴訟の代理 |
| こんな方におすすめ | 遺言書の作成を中心に相談したい方。紛争の心配がなく、手続き全般をサポートしてほしい方 | 不動産の相続登記も合わせて依頼したい方 | 相続人間ですでに争いがある、または争いが予想される方 |
とくに、遺言書や相続を専門としている専門家であれば、夫婦がお互いに遺言書を作成する場合のポイントを熟知しており、最適なアドバイスが受けられるといえるでしょう。
まとめ
今回は、広島で子どもがいない夫婦がお互いに遺言書を作成するべき理由について解説しました。
遺言書がない場合、残された配偶者にとってほかの相続人と一緒に相続手続きを進めるのは精神的に大きな負担になりかねません。また、万が一手続きが順調に進まない場合、残された配偶者の生活が危うくなる可能性もあるでしょう。
残された配偶者の生活を守り、安心して日々の生活を送ってもらえるようにするために、子どもがいない夫婦はお互いに遺言書を作成しておくことが重要です。遺言書の作成について少しでも不安がある場合は、遺言書や相続を専門とする専門家に相談するのがおすすめといえるでしょう。
広島もみじ法務事務所は、遺言書の作成に特化した遺言相続専門の法務事務所です。代表行政書士には裁判所で遺言相続の実務経験もあり、裁判の現場で培ったノウハウと専門知識を踏まえた最適なアドバイスが可能といえます。
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