遺言書で遺言執行者に指定されている方のなかには、必ず就任しなければならないのかと不安に感じている方も多いでしょう。実は、就任する前であれば、就任するか断るかを自分で決められます。
今回は、遺言執行者への就任前に確認するべきポイントや、就任後の業務について解説します。また、就任後の業務を任せられるおすすめの専門家についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
遺言執行者に就任するかは自分で決められる

一般的に、遺言書を書いた人は遺言執行者を自由に指定できるようになっています(民法第1006条)。遺言執行者に指定された方のなかには、「すぐに手続きを始めないといけない」と考えてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、指定されたからといって、必ず就任しなければならないわけではありません。指定された時点では、あくまでも候補者のような立場であり、就任する意思表示をしない限りは断ることができます。
また、指定された方が未成年者や破産者だとそもそも就任ができないため、該当する場合はその旨をほかの相続人や受遺者に伝えるようにしましょう。
意思表示をしないまま放置するのは要注意
遺言執行者に指定されていた場合に取るべき対応は、就任をするか、断るかの意思表示をすることです。
万が一、何も意思表示をしないまま放置していると、相続人や受遺者から就任するかどうか催告される場合があります。そして、ある程度の期間が経過しても返事をしなかった場合には、就任を承諾したとみなされる可能性があります(民法第1008条)。
指定されていることを知った場合や、相続人などから返事を求められた場合には、何もせずに放置するのは避けましょう。就任するのか、断るのかを検討したうえで、できるだけ早めに意思表示をすることが大切です。
就任後の辞退は難しい
指定された時点であれば、就任するか断るかを自分で判断して決められます。しかし、いったん就任してしまうと、辞めたいと思っても自由に辞められなくなります。
就任後に辞める場合には、原則として家庭裁判所で手続きをして許可を得る必要があります(民法第1019条)。また、手続きをすれば必ず許可が出るというわけではなく、辞めるための正当な事由があると判断されなければなりません。
少しでも就任を迷っている場合は、安易に就任したと受け取られるような意思表示をしないことが大切です。自分だけで判断するのが難しい場合は、専門家への相談も検討するとよいでしょう。
断るなら早めに書面で伝える
遺言執行者への就任を断る場合は、早めにその意思を伝えることが大切です。法律上、断るための意思表示の方法や形式は定められていません。
しかし、後日のトラブルを防ぐためには、口頭だけで済ませるのではなく、書面やメールなど記録が残る方法で伝えるのが重要です。たとえば、次のような内容を入れたうえで、記録に残る方法で伝えるようにしましょう。
- 遺言書で遺言執行者に指定されていることを確認したこと
- 遺言執行者への就任を辞退する意思
- 辞退する日付
- 自分の氏名、住所、連絡先
- 必要に応じて、今後の連絡先や書類の送付先
なお、相続人間に対立がある場合や、辞退したことを後から争われる可能性がある場合は、内容証明郵便などのより確実に記録を残せる方法を選ぶのがよいといえます。
広島で遺言執行者に就任する前に確認するべきポイント

遺言執行者に指定されたときは、遺言者との関係や気持ちだけで就任を決めるのではなく、実際に対応できる内容かどうかを冷静に確認することが大切です。
就任すると、相続人らへの通知・相続人や財産調査・財産目録の作成・預貯金の解約や財産の引渡しなど、遺言書の内容を実現する義務を負うことになります。また、就任後に対応が難しいと気づいても、自由に辞められるわけではないことは既に解説したとおりです。
ここでは、就任するか、断るかを判断する際に確認しておきたいポイントを見ていきましょう。
財産の内容が自分で対応できる範囲か
まず確認したいのは、遺言書で対象になっている財産の内容です。預貯金だけなのか、不動産、有価証券、農地、自動車、事業資産などが含まれるのかによって、就任後の負担は大きく変わります。
たとえば、預貯金が中心で、金融機関の数も限られている場合は、比較的対応しやすい可能性があります。一方で、以下のような場合は、対応が難しいケースが多いでしょう。
- 不動産や有価証券が複数ある
- 農地や事業資産が含まれる
- 財産の所在がはっきりしない
財産の種類、数や状態を確認せずに就任を承諾すると、想定以上の作業を抱えることになり、大きな負担になる可能性があります。対象になっている財産の内容は、必ず確認するようにしましょう。
相続人らに争いや不満がないか
次に確認すべきなのは、相続人や受遺者同士の関係です。遺言執行者はあくまでも遺言書の内容を実現する立場であり、特定の相続人の味方や代理人ではありません。
しかし、相続人らの関係が悪い場合や、すでに遺言書の内容に不満を持っているようば場合は、遺言執行者が解決できる問題ではないにもかかわらず、板挟みになる可能性があります。
就任後にトラブルに巻き込まれないように、事前に相続人らの関係などを確認しておくようにしましょう。
手続きにかける時間があるか
遺言執行者に就任すると、相続人や財産調査、財産目録の作成などさまざまな作業を進めなければなりません。基本的には、一度書類を書けば終わるものではなく、役所や金融機関とのやり取りを何度も行う場合が多いでしょう。
たとえば、相続人調査のためには戸籍を収集する必要があります。とくに、被相続人が本籍を何度も移している場合は、繰り返し戸籍を郵送で取り寄せて揃える必要があり、負担になりやすいでしょう。
就任後の作業には、期限が関係するものや、相続人への説明が必要になるものもあります。「仕事の合間に少しずつ進めればよい」と安易に考えるのではなく、自分の生活や仕事の状況を踏まえ、本当に対応できるか十分に検討しましょう。
適切に業務を進められるか
遺言執行者に就任すると、就任した事実を相続人らに通知するだけでなく、財産目録の作成や定期的な報告などを適切に行う必要があります。適切に業務を進めないとトラブルの原因になるだけでなく、生じたトラブルの責任を負う可能性もあるでしょう。
就任後にするべき業務の内容だけでなく、万が一トラブルがあった場合の責任を負う可能性があることを十分に理解したうえで、就任について判断することが大切です。
広島で遺言執行者に就任した後にやるべきこと

就任後は、遺言書の内容を実現するために業務を進める必要があります。主な業務の内容は以下のとおりです。
| 主な業務 | 内容 |
|---|---|
| 相続人への通知 | 遺言執行者に就任したことや遺言内容を相続人に伝える |
| 相続人調査 | 戸籍を集めて、誰が相続人にあたるかを確認する |
| 財産目録の作成 | 預貯金、不動産、有価証券、負債などを整理する |
| 財産の解約・名義変更 | 預貯金の解約、不動産や自動車の名義変更などを進める |
| 財産の引渡し・報告 | 受遺者に財産を引き渡し、手続きの結果を説明できるようにする |
ここからは、それぞれの業務について解説します。なお、遺言書の内容を実現する手続き全体について知りたい方は「「遺言書の内容を実現するには?広島の遺言執行の手続きと注意点をわかりやすく解説」の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
相続人や受遺者への通知と相続人調査
遺言執行者が任務を開始したときは、まず相続人や受遺者に対して就任した事実や遺言書の内容を通知する必要があります(民法第1007条)。通知の方法に法律上の決まりはありませんが、基本的には記録に残るように書面で行うのがよいでしょう。
また、通知先である相続人や受遺者を確認するために、亡くなった方の出生から現在までの戸籍や、相続人や受遺者全員の現在の戸籍を収集するところから始める必要があります。
とくに、人数が多い場合や、疎遠な人がいる場合などは調査に時間がかかるケースが多いため、注意しましょう。
財産調査と財産目録の作成
次に、亡くなった方の財産目録を作成し、相続人や受遺者に交付する必要があります(民法第1011条)。財産目録には、預貯金、不動産、有価証券、自動車、負債などを整理して記載します。
財産目録に漏れや誤りがあると、あとからトラブルになる可能性があるため、通帳、残高証明書、固定資産税納税通知書などの資料を確認して、慎重に進めるのがよいでしょう。
相続人や受遺者に財産を引き渡す
必要な調査などが完了したら、遺言書の内容を実現するために預貯金の解約や名義変更などを進めて、相続人や受遺者に財産を引き渡します。預貯金なら金融機関で解約、不動産なら法務局で相続登記など、財産の種類によって必要な手続きや相談先が変わるため、どこで何をすればよいかを事前に確認しておくようにしましょう。
完了報告
遺言書の内容を実現するための手続きがすべて完了したら、相続人や受遺者に対して業務完了の報告をします。業務完了の報告をしない限りは遺言執行者の状態が続くため、必ず報告しましょう。
広島の遺言執行者の業務は専門家へ任せるのが安心

これまで見てきたとおり、遺言執行者に指定された場合、就任するか断るかは自分の意志で決められます。しかし、一度就任すると正当な理由がない限りは辞任ができなくなるため、基本的に就任後の辞任は難しいことは覚えておいた方がよいでしょう。
また、就任後は、遺言書の内容を実現するためにさまざまな専門的な業務を進める必要があります。万が一、業務を適切に進められなかった場合はトラブルになる可能性があり、遺言執行者として責任を負う可能性もあるでしょう。
ここまでの記事を読んだ方のなかには、自分だけで就任するか判断できるのだろうか、就任後に適切に業務を進められるのだろうかと、不安に思っている方もいるでしょう。少しでも不安に思っている方は、専門家に遺言執行者の業務を任せるのがおすすめです。
法律上、遺言執行者は第三者に業務を任せられるようになっています。したがって、就任した後に自分だけで業務を進めるのが難しい場合であっても、専門家に業務を任せることで適切に業務を進めてもらえるため、安心できるでしょう。
また、就任前であれば、自分の代わりに遺言執行者になってもらえる可能性もあります。家庭裁判所で選任の手続きをする必要があり、最終的には裁判所が判断するため確実ではありませんが、専門家が選任されるケースが一般的です。
なお、遺言執行者の業務を専門家に任せる場合には、遺言書や相続を専門にしている専門家を選ぶのがおすすめです。とくに、就任後に業務を専門家に任せる場合、就任している以上は遺言執行者としての責任を負う可能性があります。
遺言書や相続を専門にしており、豊富な知識や経験がある専門家であれば、適切に業務を進めてくれるため、責任を負うリスクを抑えられるでしょう。
たとえば、広島もみじ法務事務所は遺言書や相続専門の行政書士事務所です。遺言執行者への就任の判断や業務について適切なアドバイスを受けられるだけでなく、専門家としての豊富な知識や経験を活かしてスムーズに業務を進めてもらえるため、安心して任せられるでしょう。
遺言執行者について広島でよくある質問

最後に、遺言執行者についてよくある質問を見ていきましょう。
遺言執行者に指定されたら必ず就任しなければなりませんか?
必ず就任しなければならないわけではありません。遺言書で指定されていても、承諾する前であれば辞退できます。
ただし、一般的に一度就任すると辞任するのは難しいため、慎重に判断するようにしましょう。
遺言執行者を断る場合、誰にどのように伝えればよいですか?
就任を断る場合は、相続人や利害関係人に対して、早めに辞退の意思を伝えましょう。口頭でも意思表示自体はですが、後日のトラブルを防ぐために、書面、メール、場合によっては内容証明郵便など、記録が残る方法が安全です。
就任するか断るか決めないまま放置するとどうなりますか?
放置している間に、相続人やその他の利害関係人から就任するか決めるように催告を受けた場合、就任を承諾したものとみなされる可能性があるため、注意が必要です。
遺言執行者に就任した後でも辞任できますか?
辞任できる場合はあります。しかし、就任後は家庭裁判所の許可がないと辞任ができないため、基本的には難しいと考えておいた方がよいでしょう。
相続人から反対されても手続きを進められますか?
遺言執行者には、遺言書の内容を実現するための権利が認められているため、一般的には相続人から反対されても手続きを進められるでしょう。
ただし、トラブルになる可能性が高い場合には、弁護士に相談するのがよいといえます。
遺言執行者の業務を専門家に任せれば責任は負いませんか?
就任後に専門家に業務を任せる場合、就任している以上は遺言執行者であることに変わりはないため、責任を負う可能性はあります。
したがって、専門家に業務を任せる場合には、責任を負うリスクを抑えるためにも、遺言書や相続を専門にしている専門家を選ぶのがよいでしょう。
まとめ
遺言書で遺言執行者に指定されても、必ず就任しなければならないわけではありません。
法律上、就任前であれば就任するか断るかを自分で決められるため、遺言書の内容、相続人の関係や財産の種類などを確認して、慎重に判断するようにしましょう。ただし、いったん就任すると、正当な理由と家庭裁判所の許可がない限りは辞任できなくなることは、覚えておいた方がよいでしょう。
また、就任後は相続人や受遺者への通知・戸籍などの資料の収集・財産目録作成など、遺言書の内容を実現するためにさまざま業務を適切に進める必要があります。財産目録に漏れがある、相続人を見落としていたなど、適切に進められなかった場合はトラブルになる可能性があるため、注意が必要です。
遺言執行者への就任に少しでも不安がある方は、専門家に相談して業務を任せるのがおすすめです。とくに、遺言書や相続を専門にしている専門家であれば、遺言執行者の業務を適切に進めてもらえるため、安心して任せられるでしょう。
広島もみじ法務事務所は、遺言書に特化した遺言相続専門の行政書士事務所です。代表行政書士は、裁判所で13年にわたり、相続・遺言書を含むさまざまな事案に携わってきました。その経験を活かして、各専門家と連携しながら、複雑なケースであっても適切に遺言執行者の業務に対応できるのが強みです。
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